神降し

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神降し

「ずいぶん丸いきつねだな」 「神降ろしの儀を繰り返している内に膨らんできたのです。神霊の欠片が少しずつ取り込まれているのでしょう」 「破裂したらどうなるんだ」 「……神霊を見ることが出来るかもしれません」  男の喉がきゅうと鳴った。 「お父様の魂を呼ぶ儀を執り行います」 呪文を唱えるときつねがことこと動く。 「降りていらっしゃいました」 祈祷師が更に呪文を唱え質問する。 「あなたを殺した人間は誰ですか?」  きつねはガタガタと激しく揺れ、パリンと割れた。破片の中から光がふわりと飛び出す。 「親父」 「お前のせいじゃない。お前が少しグレたくらいで俺の心臓は壊れたりしない。幸せになれ、と仰いました」  男の目からぽろりと涙がこぼれた。 祈祷師が障子戸を開けると、光の玉はすうっと天に昇っていく。  後日、男はある祈祷師が詐欺罪で訴えられたという噂を耳にした。それでも、心は晴れ晴れとしていた。 了
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