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 夜である。  仕事を終えた人々は千切れた輪のようになりながら家へと帰る。または、家へ帰るための中継地点へ歩き急ぐ。  そして彼は半目開きでそれを眺める。 「帰りたくない……」  彼の足は家へとは向かない。  当然、中継地点へも向かない。  真っ暗な夜である。せっかくの夜である。
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