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 夜は不思議なものである。  虫は息を吹き返したのである。  彼からの祝福の贈り物と共に。  虫は、紳士であった。優に一八〇センチはあろうと思われる身体を、黒いスーツと帽子で隠してしまっていた。  しかし、それより驚くべきは、虫の顔である。一度、その顔を直視してしまえば、とても忘れられぬだろう。そう思わせるほどの不気味さながら、目を瞑ってみると、あっという間に忘れてしまうような、公園で話しかけてきたお爺さん程度の印象しか与えない、そんな顔である。  空虚である。  ……虫は、夜空に高く靴の音を響かせながら、彼の跡を追っていた。
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