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 彼が、バーの机で書いていた遺書。  その一 お天道様。御冗談。追従笑い。復唱。予想通りの展開。全てつまらないのである。隣に座ってる娘が綺麗かどうかが、そんなに大事なことか。青い鳥を捕まえたからといって、いいことが起きるなんて、ねえ、甘ったれているよ。  その二 金があることが幸せの全てでないとして、じゃあ君、何が幸せの基準なんだね? 思った通りのことが言えること? 他人と喜びが分かち合えること? 違うね。誤魔化しが効くことだ。  その三 誰も見ていないところで、他人を殴ったとする。その時の自らの拳の重みをすぐに忘れられるような人間に、なってみせます。生まれ変わったらね。  その四 この項が一番、気になるところだろう。俺の遺産。好きなことに使ってくれ。そんなにはないけれども。二、三年、留学できるぐらいの金はあると想います。  その五 この遺書を読んでいる人へ。  馬鹿!  ありがとう。生涯で、一番、笑いました。
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