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 彼は、その遺書を書き終えて、一度読み返し、カクテルを注文し、再び読み返し、出されたカクテルを一口飲み、二口飲み、そして三度読み返して、それからそれを机に置き、残っていたカクテルを全て一気に飲み干した。一瞬、果てしのない嫌悪感と吐き気に襲われたが、じきに目が醒めてきた。  彼は非常に満足していた。  彼はさらさら死ぬつもりなどなかったのだ。この遺書だけを机に残して、意味ありげに立ち去るつもりだったのだ。主たる目的は特にない。いわば快楽犯である。あとは尾鰭背鰭ということで無銭飲食がくっついて来たら、まあ面白い程度の話である。
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