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おじいさんネズミは、トラが見える森までやって来ました。
森の中のトリカブトが群生しているところまで来ると、トリカブトを何本か根から掘り起こしました。
トリカブトには葉にも花にも毒がありますが、根には特に強力な猛毒があるのです。
巨大なヒグマやトドだって、このトリカブトの毒矢が刺さると、たちまち死んでしまいます。
おじいさんネズミは、このトリカブトの根をギザギザの岩にこすりつけて細かく砕き、砕けたカケラを全身の毛にスリ込みました。
おじいさんネズミは、トラの習性をよく知っていました。
トラは木の上で、じーっと獲物が訪れるのを待ち、獲物が近くに来ると、一気に襲撃して食べてしまうのです。
たとえ、トラの首に鈴をつけたとしても、鈴の音が聞こえないからといってネズミは安心して森に出かけられません。
鈴の音が聞こえた時は、もう手遅れなのです。
おじいさんネズミは、ネズミの国の平和を守るためには、トラを殺すしかないと考えました。
おじいさんネズミは、少し離れた木の陰からトラに声をかけました。
「こんにちは。トラさん。あなたの毛皮はなんて素敵な模様でしょう!」
「なんだ。ネズミか。俺の毛皮が、そんなに気に入ったか?」
「はい。ワシは長いこと生きて来ましたが、今まで、これほど素晴らしい毛皮を見たことがありません。もっと近くで、よーく見てみたいなあ。」
おじいさんネズミは、トラは気位が高く、狡猾で気が短いことも、よく知っていました。
「そんなに見たいなら、近くに寄って見ればいいじゃないか。」
「近くに寄ったら、あなたはワシを一飲みにするでしょう?」
「あはは。そうかもしれんな。」
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