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おじいさんネズミは、落ち着いて言いました。
「ところでトラさんは、十二支をご存知ですか?」
「十二支? まだ、食べたことがないな。どんな生きものだ?」
「十二支というのは、神様が選んだ動物の順番です。ネズミが一番、ウシが二番、トラは三番目です。」
「何だと?この俺より、ネズミやウシが偉いというのか?」
「そうです。その証拠に、これをご覧なさい。これは、動物の中で一番偉いものが、動物の王様である印に神様からいただいたものです。」
おじいさんネズミは、光り輝く金の鈴をトラに見せました。
「おおおおお、何と素晴らしい輝きだ!」
トラは身を乗り出して金の鈴に見とれています。
しめしめ。
おじいさんネズミは、すかさずトラに向かって言いました。
「この鈴は、ワシが動物の中で一番偉いという印だ。ところが、ワシはすっかり年とって、この金の鈴を首につけていると重くてつらいのじゃ。だが、王様である限り、首から金の鈴をはずす訳にはいかん。それで、そろそろ他の動物に、この鈴を譲ろうと考えておった。そこで相談だ。本当なら、ワシの次はウシが偉いことに決まっておるが、あんなのろまなウシが、はたして動物の王様にふさわしいだろうか?それに比べてトラさんは頭が良く、美しい毛皮を持っていて、力も強く、まさに動物の王様にふさわしいと、ワシは思うのだ。どうですかな?トラさん。ワシに代わって、動物の王様になってくれませんか?」
「うむ。確かに、のん気に一日中、草をむしゃむしゃ食っては寝てばかりいるウシは、動物の王様に向いてない。よし。それでは、その金の鈴を俺によこせ。今日から俺が動物の王様になってやろう!」
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