虎に鈴

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おじいさんネズミは、金の鈴を太陽の光にかざし、キラキラさせながら言いました。 「ああ、よかった。安心しました。トラさんが動物の王様になったら、森に住む動物たちは、さぞかし大喜びすることでしょう。ところで、トラさんは自分で、この鈴を首につけることができますか?動物の王様であることを神様に認めてもらうためには、首に鈴をつけなければならないのです。」 「そうか。それでは、貴様(きさま)が俺の首に鈴をつけろ。」 「そうしてあげたいのですが、ワシが、トラさんの首に鈴をくくりつけてしまったら、トラさんは用のなくなったワシを食べてしまうでしょう?なにしろネズミの肉は年をとるほど美味しくなると言われていますから。」 「どうかな。俺に王様の鈴を譲ってくれたお礼に、貴様は生かしておいてやってもいいぞ。貴様のような小さなネズミを1匹食っても、腹の足しにはならないからな。」 おじいさんネズミは、うっとりした目でトラを見て言いました。 「さすが王様!なんと優しく利口な判断でしょう。ワシを食わないと約束してくれたお礼に、動物の王様だけが使える特別な魔法を教えましょう。」 「なに?魔法だと?」 トラは興味深そうに目を爛々(らんらん)と輝かせました。 「お日様が出てから沈むまでの一日の間に、同じ種類の動物を101匹食べると魔法が使えるようになるのです。ワシが、こんな小さな体で、この年まで元気に王様をやってこられたのは、その魔法のお陰じゃ。ワシは、1日のうちにゴキブリを101匹食べて魔法を使えるようになった。王様は今日、ネズミを100匹食べました。けれど、お日様が沈む前に、あと1匹、ネズミを食べると、魔法が使えるようになるのです。魔法を使えば、空を飛んで鳥を食べることができます。水に潜って魚を食べることもできます。体を大きくしてゾウやキリンを一飲(ひとの)みにすることだってできるでしょう。」 遥か向こうの西の山の上では、お日様が、今にも沈みそうになっています。 トラは目を輝かせ、ニヤニヤして言いました。 「約束しよう。貴様は俺を動物の王様にしてくれた素晴らしいネズミだ。決して貴様を食ったりしないから、早く、その鈴を俺の首につけてくれないか。」
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