雨の日の午後

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「………それで、話って、何?」 私は、夢子と談笑しながらも、少しは時間を気にしながら呟いた。すると、夢子は、キリリとした締まりのある面持ちになり、懐からシステム手帳を取り出し、私の瞳を見つめながら話し始めた。 「………ねぇ、由利。………大学時代に同じサークル仲間だった、春日 吾妻 君って覚えてるかしら?」 「………カスガ アズマ。」 ………春日 吾妻。その名前は覚えているも何も、大学時代を卒業してからも片時も忘れた事は無かった。彼は、私にとっては、その、忘れもしない、………初恋のヒト。 吾妻は、実家が老舗の製薬会社を営んでいる財閥の御曹司でありながらも、親の七光りである事をひけらかす事も無く、彼自身は、将来はシナリオライターを目指しており、演劇サークルの中でもシナリオ執筆に専念していたのよね。 ………………………………………。。。 「………それは、覚えてるけど。それで、その春日君がどうしたの?」 私は、夢子に尋ねた。すると、彼女は、傍らに携えているアタッシュケースの中から1冊の戯曲台本を取り出して、私の目前に差し出すのだった。その虹色に包まれた脚本のタイトルの部分には………。 ………………『エデンの園に消ゆ』 と刻まれていた。夢子は、パッチリとした二重瞼を見開き、瞳を輝かせながら私に向かって話し始めた。
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