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「………実は、春日君が新人賞に応募した小説が見事、入賞したんだけど。それが、テレビ局のディレクターの目に止まって、是非ともその小説をドラマ化したいって言う依頼を受ける事になったの。それで、春日君が言うには、その物語の主人公の役を由利に演じて欲しいだなんて言い出して。」
「………………………………………。」
……………………………………………!!!
夢子は、元々は実家が香川県善通寺市の辺りにあるのだけれど。しかしながら、彼女の今は都内にある出版社に編集所員として勤務しており、偶然にもその片手間で吾妻の窓口としても動いているらしい。
そんな彼女は、長期休暇を利用して帰省も兼ねて、どうやら私の所在を突き止める為にアチコチ動いていたらしい。………宛も無く彷徨っていた夢子。………そうとも知らず、当たり前の様に時間が過ぎて行くのを只々待ち続けているばかりの私。そんな夢子と私が偶然にも横断歩道の上で出会えるなんて。
明らかに、運命の歯車が動き始めようとしている瞬間を、私は感じ取ってしまっているのだった。
………それでも、脳裏を横切る不安。
私は、夢子に向かって呟いた。
「………私なんかで良いのかな?」
「……………………エッ?」
その時、私は、思いの丈を夢子に打ち明けようとした。
「………私、今でも、演劇とかは好きよ。お芝居するのも好きだし、舞台や映画を見るのも好き。」
「……………………………………。」
「………でも、プロの世界の中で私なんかが通用するのかなぁ。」
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