誘拐犯の遊び

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誘拐犯の遊び

「よーしよし。良い子だ」  この男は坂田(さかた) 瑛士(えいじ)と言う連続誘拐犯だ。瑛士の頭脳明晰(ずのうめいせき)ぶりには警察も困っている。  瑛士が今、誘拐したのはごく普通の一軒家に住んでいる子ども、田中(たなか) 雅俊(まさとし)だ。  瑛士は大きく大豪邸(だいごうてい)とか高層マンションを狙ったりはしない。小さくコツコツと一軒家や団地から誘拐するのだ。勿論(もちろん)監視カメラの包囲網(ほういもう)を完全に把握(はあく)し、計画を立てた上で。そのため警察は(はじ)め、ただの家出だと思い、実際一週間以内に帰ってくる。だからろくに捜査をして来なかった。捜査をし始めたのは瑛士が五十回誘拐をした頃。それが全て近場だったからだ。  実は瑛士は金が欲しいのでは無かった。子どもが好きだったのだ。しかし瑛士は独身。子供がいるはずも無く、教師をやれば良いのか、と思った時期もあったが、その時代、反面教師がまだ残っていた。瑛士は子どもに乱暴は出来ないと思い、教師になるのをやめ、苦肉の策だが、誘拐犯を始めたのだ。  警察に通っているネームは『笑顔と(しか)めっ面』、『誘拐犯?』だった。前代未聞の誘拐という事で、私の子どもも誘拐して!と言う頭の壊れた母親まで現れた。  瑛士は良い人か、悪い人かは分からない。だが誘拐してる事に変わりは無いので追うしか無い。と言う疑問を抱えながら捜査を皆、続けている。 「よーし、着いた」 「うぐ!むごごっ!」  雅俊が騒ごうとする。が、それを瑛士が引き止める。  なぜなら誘拐して連れてきた場所は人通りの多い通りで(さら)に、隣の建物が交番だからだ。  瑛士が言うには灯台下暗(とうだいもとくら)し作戦だそう。  瑛士は他の誘拐犯とは全く違った方法で子どもを黙らせた。  普通は(おど)したり、ガムテープを貼ったりすると思うのだが……瑛士は……
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