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回想
暑中見舞いが届いた。
君からだ。
『お元気ですか』から始まる君の挨拶。
15年前から変わらない、少し丸みを帯びた文字が今年も丁寧に添えられていた。
どこで撮ったのかは分からないが、なんとなく幸せそうな君と、君の家族。
その顔を見ると、あぁ、君は幸せになっているんだと思う。
ドキドキした。
隣の席に来た君が、星を取り入れたような瞳でにっこり笑って「よろしく」と言った時、僕の心臓は鼓動を早めた。
欲しかったゲームを手に入れたとか、悪事がバレたとか、そういう時のものではない。言葉で表せない、いじらしい感覚を隠しながら、生まれて初めて顔を逸して挨拶をした。
君は誰にでも好かれる良い人で。優しい人で。
僕はそんな君を遠目で見ながら、説明できない鼓動を持て余す。
そんな日々が疾風のごとく過ぎていった。
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