3人が本棚に入れています
本棚に追加
「なんで庇ったの?」
熱がこもった屋上で、君は泣きそうな声で問いかけた。
唇の端から流れた血が、君の白い肌を汚す光景を見ることさえ辛かったから、真っ赤な跡が残る頬を乱暴に擦って、僕はてきとうな言葉を並べた。
「なんかムカついたから。」
特別仲が良かったわけじゃない。
ただ通りかかっただけ。
『ウザい』『キモい』『死ね』
君が合意なく汚れていく様を見過ごすことが許さなかった僕は、君に向けられた拳を反射的に体で受け止めていた。煩わしい喧騒から早く君を遠ざけたくて、僕は君の手を握って走り出していたのだと思う。
「・・・ありがとう」
傷をつけたまま、君は呟いた。
「・・・うん」
ドキドキ・・・
また胸が高まっていく。
身の丈に合わないことをした興奮が収まっていないのだろう。と、わざとらしい言い訳をつけておいた。
最初のコメントを投稿しよう!