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「そういう関係なんでしょ?」という目で見る者もいた。
でも本当に特別な仲ではなかった。
毎日のように顔を合わせ、気まぐれ程度に他愛もない話をする。
変化のない漠然とした仲を、僕は心地よいと感じていた。
そう思いたかったのに。
消えて良いはずの鼓動が収まることはなかった。それどころか、どんどん強くなっていった。
「好きな人はいる?」なんて、君は無邪気に聞いてくるから、その度に隠すのが必死だった。僕がボロを出すのを、君が今か今かと待っているようで。
近づけば近づくほど、君の美しさに気付いてしまうようだった。
修学旅行の帰りのバス。
子どものようにはしゃいだ君は、僕の隣で目を閉じていた。彫刻のように洗練された横顔をチラリと見たとき、旅行の楽しさに紛れ込ませていた鼓動がまた高まっていくのが分かった。
多分緩やかなカーブに差し掛かった時だと思う。
その美しい顔が、僕の胸元にトンっと寄り掛かった。その時ほど、僕が戸惑ったことがあっただろうか。
スゥスゥと小さく寝息を立てる君の耳に、僕の心臓音が届いてしまったら・・・焦っても焦っても、ドキドキとした血液の流れは全身を巡っていく。
囃し立てる声、視線、シャッター音。
その全てを、「うるせぇよwww」って軽く受け流すふりをしながら、休まらない鼓動は君ごと貫通してしまいそうだった。
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