回想

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「好きな人ができたんだ。」 君に打ち明けられた時、僕は少し考えてから よかったじゃん  どんな人?  って 聞いた気がする。 それから君は、『好きな人』を褒めちぎっていた。優しくて、一緒にいて楽しい人。テンプレートな感想ではあったが、そう話す君の目は初めて会った時と同じくらいに輝いていた。 「一緒にいたら、やきもち焼かれちゃうんじゃない?」 冗談半分に聞いた僕に、君は笑う。 「そんなわけないよ。ただの友達だって相手にも言ってるし。」 あぁ  君は本当に好きな人を見つけたんだ  そう思った。 分かっていた。 ドキドキとした鼓動の正体も。僕が君にどんな感情を抱いていたのかも。 この感情が永遠に君に届くことはないことも。 君との関係は心地の良いものだったし、何より僕に、友達以上でも以下でもない関係を変化させる勇気はなかった。 潔く諦めたはずの鼓動は、鳴り続けている。 『上手くいきませんように』 悪魔のような感情を押し殺しているようだった。
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