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それなのに、青は、悲しくて、悲しくて、ならなかった。
蒼は、青にとって、生きる目標だったのだ。
蒼みたいになりたいという、明確な理想だったのだ。
それが、いつも、目の前にあるという幸運に、青はずっと、気付かなかった。
蒼は、闘病の末、死んだ。
蒼は亡くなる前の日に、苦しさを押し殺して青に言った。
「……青は……この世界に……たった一人しかいないんだ……誰の代わりでもない……忘れないで……それは、奇跡みたいに素晴らしいことなんだよ……」
青は、蒼のやせ細った体を抱き締めて、泣いた。
その日、空は青く澄み渡っていた。
そして、青は、ひとりになった。
青は、本当に、ひとりになり、たった一人の青として、新しい人生を歩み始めた。
ー END ー
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