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カイはポケGOでゲットした宇宙人。
ゲームとは無関係だし当のポケモンにも逃げられちゃったけど。
桜の木の下で行き倒れてて。
見た目は地球人と全く同じ。目を閉じた綺麗な顔はちょっとこの世のものじゃない感あったけど。宇宙人ならそれも納得。
まあ、普通は宇宙人とか思わないよね。信じないよね。
でも私にとって決定的な決め手があった。
ゴールデンレコード。
その昔、NASAがボイジャー号に乗せた地球の情報を詰め込んだ黄金色のレコード。
いつか宇宙人に伝わることを願って。
彼はそのゴールデンレコードを持っていた。正確には私が宇宙に飛ばしたゴールデンCD。
小6の秋だった。
当時、不思議ちゃんだった私は宇宙人のお嫁さんになるのが夢で、自分の身上書をCDに録音してロケット花火と共に宇宙へ飛ばしたのだ。
もちろん私の知識で飛ばせるはずもなく、同級生のガリ勉くんが改良してくれたよく飛ぶロケット花火に乗せて。
不思議ちゃんを卒業した今となっては、あれはただの環境破壊活動だったと反省してます。
その黒歴史が彼の手に握られていて『もしかしてユーリ?』と私の名前を呼んできたものだから、宇宙人が私に会いにきてくれた!って思っても不思議ではない、よね?
それで『そういうあなたはもしかして宇宙人ですか』と尋ねたら『はいそうです』と返ってきた。
これが地球人の男の人だったら、いくら平和ボケしてる私だって家には入れないけど。
でもお腹空いてそうだったし、宇宙人がわざわざ私に会いに来たんだから地球人代表としておもてなしをせねばと思って、家まで連れ帰ったわけ。
カイはやたら地球慣れしてた。
私が知らないスマホの使い方とか知ってるし、牛丼の注文もこなれてる、熱々の味噌汁を啜って「うっめ」とかしみじみ言うし、宇宙人じゃなければ日本の普通の大学生に見える。
でも宇宙のことに詳しい時はやっぱり宇宙人なんだなって思ったり。
宇宙空間ってさ、ラズベリーみたいな甘酸っぱい香りがするんだって。そんなの知ってるなんて宇宙人ぽくない?
1日の終わりにベランダでカイと缶ビール片手に空を眺めながらそんな話をするのが楽しかった。
たったの3日でいなくなっちゃったけどね。
結構落ち込んだんですよ、私。
この合コンはね、そんな私を慰めるために親友の佳奈がわざわざセッティングしてくれたの。
私のこと気に入ってる子がいるからおいでって。
あのさ、カイ。
その子ってもしかしてさ、
その時、佳奈がそっと耳打ちしてきた。
「リョウくんだからね。優莉を気に入ってる子」
違うんかーいっ!
何しにきたの、まじで。
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