25人が本棚に入れています
本棚に追加
/18ページ
優莉ちゃん優莉ちゃん、と横から袖を引かれる。
私のことが推しだというリョウくんだ。
慌てて眉間の皺を消し、にっこり顔をリョウくんに向ける。
「なーに?」
「俺ね、文系キャンパスの花見で優莉ちゃん見かけたんだよ。すんごい可愛い子いるって思って」
うちの大学は文系と理系でキャンパスが分かれてるけど、文系の方は桜の名所で知られていて、リョウくんのようにわざわざキャンパスを超えて花見をしにくる人も多い。
「その時は声かけられなかったんだけどどうしても忘れられなくてさ。そしたらマコトの彼女の知り合いだって聞いて」
「うん」
「ごめんね、今日は無理矢理」
「うん――あ、そんなことないよ」
せっかく一生懸命話しかけてくれてるのに、カイとまたにらめっこしてるからリョウくんに集中できない。
なんで睨んでくんの?
つか、あっちが睨んでくるのおかしくない?
「でさぁ……いる?」
「うん」
「え?」
急にカイの表情が変わったので驚いてリョウくんの方を見る。遅れて、さっきのリョウくんの言葉を理解した。
『優莉ちゃん、彼氏いる?』
「い、いないよ!」
「そっか。よかったー」
リョウくんは話しやすい。リョウくんが彼氏なら楽しそうなのに。
「好きな人もいない?」
好きな人。
思わずカイに目を戻すと、やっぱりカイは不機嫌な顔でこっちを睨んでる。地球侵略してきそうなレベル。両脇の女子に腕をホールドされながら。グレイじゃん。ヒトじゃないじゃん。
こっちだって宇宙戦争も辞さない心づもりでカイを睨みつけながら、リョウくんに答える。
「もちろんいないよ、好きな人なんて」
「そっか。ぐいぐい聞いちゃっていいかな。好みのタイプとか、ある?」
「地球人!」
宇宙人は門前払いってことだぜぇ。宇宙人に行間が読めるかーい?
カイの片眉がピクリと上がり、ちょっとしゅんとなる。
な、なにその顔。
一瞬ドキッとしたけど、女子とくっついてるの見るとやっぱ冷める。
「あはっ。優莉ちゃんおもろ。じゃー俺もありだよね?」
「そだね。第一条件はクリア」
カイはもうこっちは見ていない。
最初のコメントを投稿しよう!