#2 酒場のホールデム

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 髭の男は♥の5と6、ストレート確定だ。  クラブの8が♥なら、最強の手、ストレートフラッシュの可能性すらある。  対して黒髪の男は♠と♦のQ。Qのスリーカード。  強い手ではあるが、もちろんストレートには敵わない。髭の男は勝利を確信し小さく吠えた。  黒髪の男は表情を変えず、静かに5枚目のカードを待っている。  しかしディーラーが次のカードを置いた瞬間、酒場が大きくどよめいた。頭を抱える者、感嘆する者、驚きのあまり笑い出す者、髭の男は目を見開き固まっていた。  ♥のQ。黒髪の男はQのフォーカードとなり、ストレートを上回った。髭の男はしばし呆然としていたが、我に返るとカードを叩きつけ、叫び始めた。 「イカサマだ! 認めねえぞこんな勝負!」  黒髪の男は動じることなく、静かに言い返した。 「配ったのはディーラーだ。イカサマじゃない」 「てめえが決めたルールだ、どうせ店ごとグルなんだろうが!」  髭の男が黒髪の男に詰め寄り、首もとを掴んで引き上げた瞬間、大きな影が二人の間に割り込んだ。ラハイアだ。  騎士団の白いローブとリーン王国の十字紋をあしらった制服姿は、目にした者の背筋を若干硬直させるような、静かな威厳に満ちていた。  すでに激高している男は、ラハイアに対しても掴みかからんばかりの勢いだったが、相手を認識した瞬間手を離した。 「ラハイアさん? いや、これは失礼しました!」 「すまんが、この男と話したいんだ。負け分はわたしが払うから引き下がってくれんか」  髭の男は最後まで事態が飲み込めていないようではあったが、それでも金を受け取ると、そそくさと姿を消した。 「わたしはポーカーに目がなくてね、ここで面白いゲームをしていると聞いて来てみたんだ、失礼だが、サワサキというのは貴殿か?」  ラハイアは黒髪の男の前に立ち、ほほえみを浮かべながら対峙した。
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