#2 酒場のホールデム

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「そうだ。ゲームをするなら座ってくれ。ディーラー! 再開しよう」  サワサキの言葉でゲームが再開され、数人がテーブルについた。  ラハイアはディーラーに封を切っていないカードの束を手渡す。 「いつものだ。今日は大勝負になる、新しいカードではじめよう」  ディーラーはうやうやしく受け取り、封を切ってシャッフルを始めた。     リーン王国製のトランプは最高品質とされており、すべて王室直下の印刷所で作られている。それは、他国には決して真似の出来ない製紙・印刷技術の結晶と言えた。  シャッフルが終わり、ディーラーはイカサマ防止のため参加者にカット(簡単なシャッフル)をさせたあと、2枚ずつ手札を配り始めた。 「われわれの知っているポーカーとは違うようだな」  ラハイアは静かにそう呟く。 「テキサス・ホールデム、わたしの国ではそう呼ばれていた」  サワサキが答える。  このルールは彼がこの酒場に持ち込んだもので、ドローポーカーしか知らなかったリーン人の間で、ちょっとしたブームとなっていた。  ゲームが始まる。ラハイアはビッグブラインドと呼ばれるポジションで、必ず20スタークを場に出さなくてはならない。  ブラインドベットにはスモールとビッグがあり、順番に回っていく。  つまり、まったく賭けずにやり過ごすことはできないルールだ。  コールする者、フォールドする者が続き、サワサキはコールした。  全員のベットが終わり、場にフロップ(最初の3枚)が配られる。  ♥のK,♦のJ、♦の8。  チェックが続き、サワサキが40スタークをベット。ラハイアはフォールドし、一人がコールした。 「なるほど、我々のポーカーとは違って相手の手が読みやすいが、肝心なところはわからない、よく出来ているな」  ラハイアは感心したように呟いた。  ほとんどのカードが共通なので、ベットしてきた時はある程度相手の強さが予測できる。  たとえばKのペアならすでにスリーカードだし、AとKなどがあればあと1枚でストレートだ。あるいは♦が2枚でフラッシュを狙えるのかもしれない。いずれにせよ、ベットやコールをするのであれば、それなりの手が入っているはずだ。  ディーラーがターン(4枚目のカード)を配った。  ♠の7。  場はK、J、8、7となる。  サワサキがさらに40スタークをベットし、一人残っていた男もここでフォールド。  全員が降りたので、サワサキがポット(賭け金)を手に入れた。  サワサキはカードを放った。Kのペアでスリーカード、さらにフォーカードまで狙える手。  ラハイアも同じようにカードを見せた。AとJ、現時点ではJのワンペア。  それなりに強い手だが、フォールドを選択したのは結果的に正解だったと言える。K3枚には敵わない。    サワサキはラハイアの手を一瞥し、表情を伺った。
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