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#4 試金石
「そこに誰かいるのですか? ラハイア?」
ラハイアは立ち上がり、胸に手を当て頭を下げた。
「女王陛下、夜分に申し訳ありません」
現れたのは、この国の女王らしかった。
燭台を手にこちらに近づいてきたため、サワサキにも顔が見えるようになった。その顔立ちは無垢な少女のようでもあり、強い意志を感じさせる表情は戦士のようでもあった。
いずれにせよ、まだ20歳かそこらではないだろうか。
サワサキは、女王ではなく姫の間違いではないかと感じていた。
「ラハイア、そちらの方は?」
「サワサキという旅の者です。ポーカーに精通しているため、モザークとの勝負に参加させようと考えております」
「旅の者をモザークとの勝負に? 信頼できるのですか?」
女王は眉をひそめた。しかし、当然の反応と言えただろう。
「腕は確かです」
ラハイアは同じ姿勢で目を伏せたまま、簡潔にそう答えた。
「わたしの腕が確かだったとしても、問題がないとは言えないな。話によるとモザークは手段を選ばない可能性がある。仮に私以外の選手がヘボだった場合、貴国の大事な資金を守りきれるかどうか自信がない」
ラハイアはサワサキを横目で睨んだ。
その不遜な物言いに、女王も少なからず驚いたようだった。
「ラハイア、あなたはこの男を推薦するというのですね?」
念を押すように、そう尋ねた。
「恐れながら、その通りです」
言葉とは裏腹に、ラハイアの胸にはじんわりと不安が広がっていた。
どうやらこの男は常に一言多いようだ。無用なトラブルを招かなければよいが……。
「では、執務室にお連れしなさい。サワサキ殿、私はジュディス。この国の女王です。ヘボかどうか、その目で確かめるがよいでしょう」
そう言い残すと女王はさっと扉を開け、廊下へと消えた。
言葉の意味を計りかねているサワサキに、ラハイアが固い声で呟いた。
「もうひとりの選手は女王なのだ。こうなっては仕方がない、ひと勝負してもらうぞ」
女王自ら賭博大会に参加を?
サワサキは肩をすくめ、ラハイアの後に続いた。
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