緑のスポーツカー

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 次の日の朝、大輔はいつものようにジョギングをしている。大輔の表情はいつもと違う。  大輔は昨日の事を考えていた。昨日もおとといもランボルギーニに乗っていない。一体誰が使ったんだろう。それとも、自分と同じ緑のランボルギーニに乗っている人の犯行だろうか?  大輔はジョギングの間、ずっと考えていた。気になって、あんまり眠れなかった。幹江も心配していたという。  大輔はジョギングを終え、家に戻ってきた。家の前には幹江がいる。幹江の表情もいつもと違う。大輔同様、昨日の事だ。 「おはよう」 「今日から出張ね」  今日と明日は大阪でプロ野球中継の解説の仕事がある。その日の深夜、スポーツニュースにも出る予定だが、今回は大阪からの中継になる予定だ。 「ああ」  大輔は笑顔で答えた。大阪に行くのは久しぶりだ。大輔は楽しみにしていた。共に解説をするのは、かつてのチームメイトの物部(ものべ)だ。今でも親交が深い。  大輔は家に入った。だが、すぐに出て行く。すでに荷物はキャリーケースにしまわれていて、入口に置いてある。 「行ってくるわ」 「行ってらっしゃい」  大輔は家を出て行った。今回は車ではなく、鉄道で大阪に向かう。大輔は最寄りの駅に向かった。  幹江は不安そうにその様子を見ている。もしかしたら、命を狙われているんじゃないかな?  その夜、幹江は1人で居酒屋で飲んでいた。たいていいつもは大輔と一緒だが、今日は1人だ。幹江は寂しそうな表情だ。やっぱり大輔と飲むのがいい。  幹江は焼酎のロックを口にした。もう3杯目だ。幹江は顔がほんのりと赤くなり、少し酔っている。 「どうしたの?」  居酒屋の女将は不思議に思っていた。幹江はそんなに飲まないのに。どうしたんだろう。何か変な事があったんだろうか? 「最近ね、家に警察が来るの」  幹江はストレスがたまっていた。昨日、警察がやってきて、大輔が殺人事件の犯人だろうと迫ってくる。大輔はそんな事しないのに。 「えっ、事件?」  女将は驚いた。警察が来るなんて。何だろう。殺人事件だろうか? 「うん。うちの緑のランボルギーニが怪しまれてるわ」  女将は大輔の緑のランボルギーニを思い浮かべた。先日、乗せてもらってドライブに行かせてもらった。そんなランボルギーニが、疑われてるなんて。とても信じられない。 「ご主人は?」 「大阪に出張なの。野球中継の解説だって」 「へぇ」  女将はテレビをつけた。テレビからは、野球中継が流れている。大輔はこの中継を解説をしている。隣には友人の物部がいる。とても楽しそうな表情だ。今朝の表情とは全然違う。その事を隠しているんだろうか?  幹江もその様子を見ていた。もし使われていたとすると、一体あのランボルギーニに乗っていたのは誰だろう。人の車を勝手に使うなんて。絶対に許せない。  翌日、沢井小学校のある沢井ではいつものように穏やかな朝を迎えようとしている。あんな殺人事件があったのに、まったく気にしていないようだ。  1人の女性が小学校の塀に沿ってジョギングをしている。隆の妻、香澄だ。隆の突然の死から少しずつ立ち直ってきた。でも、どうして殺されたんだろうか? 隆は悪い事をしたんだろうか?  香澄は校門付近に差し掛かった。隆の母校だ。隆はどんな学校生活を送っていたんだろうか? 楽しかったんだろうか? 生きているうちに聞きたかったな。 「はぁ・・・」  校門の前で、香澄は深くため息をついた。校門はまだ閉まっている。とても静かだ。  香澄は下を向いた。その時、香澄は驚いた。校門の前で女性が血を流して倒れている。  香澄は体をゆすった。だが、反応がない。そして、体が冷たい。 「し、死んでる!」  香澄は驚いた。また死体が見つかった。隆に続いて、まただ。今度も同じ人が殺したんだろうか?  すぐに香澄は持っていた携帯電話で警察に電話をした。 「あっ、もしもし、警察ですか? 沢井小学校の校門の前で、誰かが死んでます!」  香澄は慌てていた。またもや小学校で死体が発見されるなんて。どうして小学校でこんなにも死体が発見されるんだろうか? 小学校に恨みがある人の犯行だろうか?  香澄はいつの間にか汗をかいていた。ひょっとしたら、今度は自分が狙われるんじゃないかと思った。  しばらくすると、パトカーがやって来た。パトカーにはまた川島が乗っている。また小学校で死体か。ひょっとして、小学校に恨みのある人の犯行だろうか?  パトカーから川島がやって来た。死体を見て、川島は驚いた。川島は戸惑っている。 「また死体か」  川島は考えた。この学校で何があったんだろう。  死体が見つかった事は、瞬く間に周辺の住民に広がり、人が集まってきた。みんな不安そうな表情だ。今度は自分が狙われるんだろうか? みんな怯えている。 「物騒ね」 「うん」  川島は、昨日の夜に何か不審な事がなかったか集まってきた住民に聞く事にした。 「何か、おかしいことありませんでしたか?」 「緑のランボルギーニが走っていた」  川島は呆然となった。またもや緑のランボルギーニが走ってたのか? 同じ人の犯行に違いない。 「また緑のランボルギーニが走ってたのか」  川島は慌てた。このままではまた殺人事件が起こる。早く捕まえないと。  見つかった死体はその日のうちに警察署で司法解剖が行われた。こんなにも短期間で死体が見つかるなんて思ってもいなかった。きっと同じ人の犯行だろう。 「死んだのは朝倉奈々子。31歳。先日殺された猪川隆の同級生です」  またもや沢井小学校の卒業生だ。しかも同級生だ。とすると、同級生を狙った犯行に違いない。 「同級生を狙った犯行か」 「あと、防犯カメラに犯人とみられる男の顔も写ってます」  沢井小学校には、所々に防犯カメラが設置されている。警察はそれを元に誰が犯人なのか探る事にした。  警察は防犯カメラの様子をじっと見た。昨日の夜の映像が流れる。果たしてあの死体を捨てたのは誰だろう。  防犯カメラを見始めて10分後、1台の車がやって来た。ランボルギーニだ。その中から1人の男が出てきた。その男は大きな袋を持っている。  男は袋から何かを取り出した。死体だ。きっと奈々子だろう。やっと犯人を見つけた。香澄は拳を握り締めた。夫を殺した奴だ。許せない。 「この男か」  と、川島は何かを考えた。その男に見覚えがあるようだ。 「この人・・・、平野健一?」 「えっ、知ってるんですか?」  香澄は驚いた。もうすぐ捕まるんじゃないか? 「平野建設の社長だよ」  平野健一は東京に本社のある大手ゼネコン、平野建設の社長で、親族の中には政界で活躍している人もいる。 「ああ、あの人ね」  香澄もその人を知っていた。隆からこの会社の事を聞いた。まさかあの人が隆を殺したんだろうか? 「でも、本当にこの人がやったんでしょうか? そんな事、やりそうにない人ですよ」  確かにそうだ。健一はそんな事をやりそうにない。みんなから信頼しているし、1人1人を大切にしている。とても殺人なんてする人ではない。 「だけど、聞かないと」  川島は決めた。今から東京に行き、健一にその事件の事を話し、昨日の夜に何をしていたか聞く事にした。  川島は東京に向かう車の中で考えていた。本当にこんな偉い人がするんだろうか? とても信じがたい。健一はそんな事をしそうな人じゃないのに。  13時頃、川島は平野建設の本社にやって来た。本社は高層ビル街の中にある。高層ビルにはスーツを着た人々が行き交っているが、人通りが少ない。昼休みを終えて、オフィスに戻ったと思われる。  川島は平野建設の入口にやって来た。入口には受付嬢がいる。その受付嬢はめがねを付けていて、黒いスーツを着ている。 「すいません、警察ですが、平野社長に会いたいんですけど」 「いいですよ。37階におられます」  川島は37階に行く事にした。ここには何台かのエレベーターがある。エレベーターはビルの端にあり、ガラス張りで外の様子が見える。  川島はエレベーターに乗り、37階を目指した。その間、川島は考えた。ここにも緑のランボルギーニを持っている人がいるんだろうか? ランボルギーニなんてそんなに見かけない。しかも色も同じなんて。本当に持っているんだろうか?  37階に着いた。見晴らしがよく、富士山も見える。こんな所で仕事をしたいな。  エレベーターを降りると、社長室がある。そこに健一がいるだろう。川島は拳を握り締めた。必ず真相をつかんでみせる。  川島は社長室の扉を開けた。その先には健一がいる。健一は木目調の大きな机と、革の椅子に座っている。 「何だね君は」  健一は入ってきた男に反応した。今日は面会の予定はない。一体何事だろう。 「警察の者です。平野社長、4月6日の深夜は、何をしてましたか?」  川島は期待していた。ようやく犯人が逮捕できると。こいつがきっと犯人だと。 「うーん、寝てたな。こんな時間に起きてたら、明日の仕事に響くでしょ?」  だが、健一はその時は寝ていたという。さすがにそうだろう。こんな時間まで寝ていたら会議などで居眠りしてしまう。社長としてあるまじき行為だ。  と、社長室に1人の男がやって来た。健一にそっくりだが、若い見た目だ。 「そ、そうですよね。あれっ、この人は?」  誰かに気付き、川島は振り向いた。そこには若い男がいる。 「ああ、うちの息子の孝和だよ。昔、プロ野球選手だったんですけど、全く活躍できずに数年で引退したんです」  この男、平野孝和は元プロ野球選手だ。だが、1軍に上がる事ができずに、戦力外通告を受けて引退したという。それ以後は、平野建設に就職し、着々と出生していったという。現在の役職は常務、父の跡を継いでいずれは社長になろうとしている人物だ。 「ふーん。で、君、4月6日の夜は何をしてましたか?」 「寝てましたよ。何を言うんですか?」  孝和は当たり前のような表情だ。こんな時間は家族みんな寝ている。  結局、何も手がかりをつかむ事ができなかった。あの男は健一に似た別の男だったんだろうか? 一体誰だろう。  帰りのエレベーターで、川島は一緒にいる平山勝と話をしていた。なかなか話が進展しない。川島は少しずつ焦りが見えている。 「話が全く進まないな」 「はい」  2人とも下を向いてしまった。なかなか見つからない。一体誰が殺したんだろう。 「このままでは同級生がみんな殺される。早く犯人を捕まえねば」  川島は最悪の事を考えていた。同級生ばかり殺されている。このまま犯人が逮捕されなければ、同級生がみんな殺される。何としても阻止しなければ。  その夜、沢井小学校の近くの居酒屋では、2人の男女が飲んでいた。彼も猪川や朝倉の同級生だ。彼らは殺人事件の事を知らない。ただ、自分には関係ないと思っている。 「まぁ、最近色々あるけど、今夜は飲もうじゃないか?」 「うん」  2人は生中を持っている。カウンターにはおつまみの焼鳥がある。 「カンパーイ!」  2人はグラスを合わせて、乾杯した。居酒屋のマスターはそれを嬉しそうに見ている。 「池内真一(いけうちしんいち)って知ってる?」 「ああ。あの間抜けな奴だな」  池内真一は沢井小学校にいた小学生で、猪川や朝倉の同級生だ。同級生の多くからいじめられていたが、小学校6年の頃、突然姿を消したという。それ以来、池内は見つからず、みんな、自殺したんだろうと思っている。 「あいつ、どうしてるんだろうな?」 「もう死んでいるだろうよ。あの、バカで間抜けな奴」  その時、大きな音を立てて居酒屋が爆発した。ガス爆発だろうか? それとも時限爆弾が仕掛けられていたんだろうか? 周りにいた人は驚いた。 「な、何だ?」 「爆発だ!」  周りにいた人々が近づいてきた。一体何事だろう。中の人は大丈夫だろうか? 時限爆弾が仕掛けられていたとすると、またあの殺人犯による犯行だろうか?  程なくして救急車や消防車がやって来た。辺りは騒然とし始めた。まさかこんな事が起こるとは。中にいる人は大丈夫だろうか?  次第に周りにはやじ馬がやって来た。みんな爆発現場を見ている。現場には救急隊が来ている。まさかこんな事が起こるとは。
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