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翌日、川島がやって来た。昨日の爆発事故では、従業員も客も全員亡くなったらしい。またもや沢井で事件が起こるとは。またあいつの犯行だろうか? それともただの爆発事故だろうか?
川島は乗ってきたパトカーから降りた。ここ数日、何度ここに着いたんだろうか? 速く犯人を捕まえて、捜査のために来るのはこれで最後にしなければ。
「あっ、警部、居酒屋の跡から時限爆弾の残骸が見つかったそうです!」
居酒屋の跡にいた警官がやって来た。ここの交番の警官のようだ。
「時限爆弾が仕掛けられていたのか」
「防犯カメラは?」
川島は防犯カメラを見ようと思った。防犯カメラを見れば、怪しい男が映っているかもしれない。これが犯人を捕まえるきっかけになりますように。
「こちらです」
警部は持ってきたテレビで防犯カメラの映像を再生した。川島や警官の他に、この日は非番でいなかった従業員もいる。
午後3時頃の映像を見ていたその時、従業員が反応した。
「ちょっと待ってください! この男、従業員じゃないです」
入ってきた男は黒い服で、辺りを見渡しながら何かをしている。その男は時限爆弾と見られるものを持っている。
「ここにもあの男か」
ここにも平野健一に似た男がいる。明らかに同一犯だ。卒業生を狙った犯行だ。早く犯人を捕まえねば。
「何か変な事がありましたか?」
川島は従業員に聞いた。犯人の逮捕につながる何かがわかったらいいな。
「緑のランボルギーニが通ってたな」
やはりこの時も緑のランボルギーニだ。一体誰が乗り回していたんだろう。
「ここでもあのランボルギーニが通ってたのか」
川島は緑のランボルギーニが映っている映像を見た。ナンバープレートを見れば、そのランボルギーニが誰のものかがわかる。
「ナンバープレートは?」
「東京105、お41-18」
横にいた警官はナンバープレートをじっと見つめている。
「えっ、岡崎大輔さんの車!」
川島は驚いた。そのナンバープレートは明らかに大輔のランボルギーニのナンバープレートだ。でも、誰が使ったんだろう。大輔はこの日、プロ野球中継の解説で大阪にいる。明らかに犯人ではない。誰があの車を乗り回していたんだろうか?
幹江は家に1人でいた。すでに子供たちは家を出て行き、1人で暮らしている。家には幹江1人だけだ。1人でいる時はたいてい都内を散策するのが日課だ。だが、この日は疲れていて、1日中家にいる。
幹江は家族の集合写真を見ている。まだ子供たちは小学生の頃だ。みんな幸せそうな顔をしている。そんな子供たちもみんな独立して生活している。結婚するのはいつになるんだろう。孫ができるのはいつだろう。おばあちゃんと言われたい。
突然、物音がした。閑静な住宅街に、何だろう。幹江はカーテンから外をのぞいた。警察だ。幹江は驚いた。またランボルギーニの事だろうか?
程なくして、インターホンが鳴った。幹江は玄関を開けた。玄関の向こうには、先日来た川島がいる。
「お邪魔します、警察です」
「な、何ですか?」
幹江は驚いた。また大輔が犯人だと疑っているんじゃないだろうか? 大輔は何もやっていない。無実だと信じている。
「昨日の夜、あなたの車が防犯カメラに映ってたんですよ。ナンバープレートも同じだったんですよ!」
「そんな!?」
幹江は驚いた。本当にあのランボルギーニだったとは。でも、いったい誰が運転していたんだろうか? 昨日、大輔は大阪にいたはず。どうしてあのランボルギーニが。
その時、大輔が出張から戻ってきた。岡崎はキャリーケースを持っている。
「ただいま、って何事?」
大輔は驚いた。また川島が来ている。犯人ではないのに、どうして来ているんだろう。
「岡崎大輔さん、あなたは昨日、何をしていましたか?」
「その日は大阪でプロ野球中継の解説をやっていましたよ! 何言ってるんですか?」
大輔は当たり前のような表情だ。確かに昨日、私はずっと大阪にいた。朝から昼まで大阪を歩き回り、夜は野球の解説をしていた。そして、野球の解説をした後は、新世界の串カツ屋で飲んでいた。東京どころか、関東にすら行っていない。
「そ、そうですね」
川島は焦っている。確かに昨夜、大輔はプロ野球中継の解説をしていた。犯行を行うことは明らかに不可能だ。
「はい」
大輔は真剣な表情だ。俺は人を殺していない。
「ちょっと、お宅のランボルギーニを見せてもらっていいですか?」
「いいですよ。忙しくて最近全く乗ってませんけど」
大輔は自信気な表情だ。ここ最近全く乗っていない。俺は事件に関与していない。
「そうですか」
川島は不思議そうに見ている。本当にここ最近乗っていないんだろうか?
大輔はガレージを開けた。そこには、いつものように緑のランボルギーニがある。その横には、幹江の乗っているベンツのセダンがある。どちらも大輔のお金で買った車だ。
大輔はランボルギーニのドアを開けた。ランボルギーニは2人乗りで、レーシングマシーンのような座席だ。
川島はシートをよく見た。すると、赤いシミを見つけた。血だ。誰の血だろう。
「あれっ、この血痕は?」
「な、何でしょうか?」
大輔は興味津々だ。川島が何かを見つけたようだ。大輔はよく見た。血だ。どうして血が付いているんだろうか? 前に乗った時にはなかったのに。その間に、誰かが乗って殺人を犯したんだろうか?
「署で調べさせてください」
「はい」
川島は血を採取した。この後署で調べよう。誰の血か調べて、猪川や朝倉かどうか調べよう。
と、川島は大輔が持っている写真が気になった。どうして写真を持っているんだろう。
「ん、この写真は?」
「小学校の卒業写真ですよ」
大輔は自分の小学時代の卒業写真を欠かさず持っている。自分がプロ野球選手になるきっかけを作ってくれた小学校時代を忘れないように、いつも持ち歩いているという。
「岡崎さん、その小学校の卒業生を狙った連続殺人事件や爆破事件が起こってるんですけど、知らないですか?」
「何も知りませんよ。何も変わった事がないですよ」
大輔は信じられないような表情だ。まさか、卒業生を狙った連続殺人事件が起こっているとは。一体誰がやったんだろうか? 後々自分も狙われるんじゃないだろうか? 大輔は不安になった。
「そうですね。時限爆弾が仕掛けられた日は、大阪にいたんですからね」
川島は知っている。おとといと昨日は大阪にいた。そして、野球中継の解説やスポーツニュースの解説をしていた。明らかに事件に関与していない。
その時、岡崎家にある男がやって来た。その男はスーツを着ている。
「あっ、お邪魔します」
「えっ、孝和さん」
岡崎家に来たのは、なんと平野健一の息子、孝和だ。
「あぁ、俺の知り合いなんだ」
「へぇ」
川島はその様子を見ていた。まさか、大輔と孝和が知り合いだとは。こんな縁ってあるんだな。不思議そうに感じた。
川島は困っていた。あの車の持ち主、大輔は明らかに犯人ではない。誰が大輔の車を使ったんだろう。指紋も大輔や猪川、朝倉以外残っていない。
「うーん、やはり岡崎大輔は犯人ではないのか」
事件はまだ進展がない。いつになったら犯人がわかるんだろう。川島は焦り始めた。
「どうしてこんな事でみんな死ななければならないんだ!」
瀬田は両手で机をたたいた。まだ何の手掛かりがつかめないのが悔しい。早く犯人を捕まえなければ。
「信じられん!」
机の上には、沢井小学校の卒業写真がある。その中には、猪川や朝倉もいる。このままでは彼らがみんな殺されてしまう。何とかしないと。
「あれっ、この敬称略の人、誰ですか?」
と、川島は机の上にある卒業写真の敬称略が気になった。敬称略はたった1人だ。その男は傷だらけで、少し薄汚い顔だ。
「池内真一ですよ」
猪川や朝倉の同級生の島内は池内の事を知っていた。
「その人、誰なんですか?」
「突然失踪したこの小学校の生徒ですよ。その子、卒業生からひどく嫌われていましてね」
池内真一は同級生の1人だ。池内は若くして両親を亡くし、祖母と暮らしていた。そんな池内は、ほとんどの生徒からひどくいじめられていて、不登校が多かったという。
「ふーん」
「だとすると、この男が犯人?」
川島は考えた。ひょっとしたら、いじめを恨んでの犯行ではないか? 池内を探し出して、早く捕まえないと。
「いや、そうとは思えないね。失踪した後、彼の引き出しから遺書が見つかったんですよ」
島内は残念そうな表情だ。あの時、池内を守る事ができなかった。あの時守る事ができていれば、池内は今も生きていたのに。自分のせいで死んでしまった。
「そ、そうですか。いつ失踪したんですか?」
「30年前の卒業式の前日なんですけどね」
卒業式の前日、池内の祖母から、池内が帰ってこないと電話があり、集落が総出で捜した。だが、池内は見つからず、証拠が不十分な事から操作が打ち切られた。池内の祖母はその2年後に亡くなった。最後まで池内の事を心配していたという。
「へぇ。最後の目撃情報は?」
「岡崎さん家に入ったのが最後。あの、元プロ野球選手の岡崎大輔さんの実家」
川島は驚いた。まさか、大輔の実家に来ていたとは。池内と大輔にはこんな関係があったとは。だから、大輔のランボルギーニを使って犯行をしたんだろうか?
「岡崎さんって、あの、元プロ野球選手の?」
「はい」
島内は池内と岡崎の関係を知っていた。彼らはリトルリーグの仲間で、6年の頃は大輔がキャプテンで、池内が副キャプテンだったという。2人はとても親しくて、一緒にテレビゲームをしていたという。
だが、いじめが起こった頃から遊ぶことが少なくなり、池内の性格も落ち込んでいった。池内はその事を全く伝えていなかった。復讐を恐れていたからだ。そのため、大輔もその事を知らなかった。そして、卒業式の前日、3月17日に突然姿を消した。
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