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午前中の授業が終わり、昼休みになる。私は夏希と一緒に廊下に出た。
「あー、やっと昼休みね、彩乃。屋上で食べる?」
「うん。そうしよう」
廊下を歩いていると、窓から外が見える。この天気なら屋上で昼食をとっても問題無さそうだ。そう思いながら外を見ていると、そこには電話をしている三野先生の姿があった。なんとなくしばらく眺めながら歩いていると、三野先生の顔色が急に悪くなった。何があったのか分からないがとにかく苦しそうに見えた。そして、三野先生はそのままどこかへ行ってしまった。
「ん?どったの彩乃?」
「なんでもない」
私は少し走って夏希に追いついた。
そのまま夏希と一緒に屋上に行き、2人で弁当を食べ始めた。
「あーやっぱり外で食べる弁当はうまいねー」
「そうだね」
「そういえば彩乃、進路調査どうしたの?」
「んー。やっぱりお母さんに迷惑かけたくないから、働こうかなって」
「そっかぁ彩乃、お母さんの、沙織さんのために、ね」
「うん。母子家庭ってやっぱりあんまりお金なくて、少しでもお母さんが楽できるようになればなあって」
「彩乃偉いねー。偉いぞ偉いぞー」
夏希が私の頭を両手でわしゃわしゃする。
「きゃ。やめて、やめてよ」
その後も、お弁当を食べたり、夏希が抱きついてきたり、そんな風に二人でふざけ合った。
今日の授業が終わり、下校時間になった。私は夏希と一緒に帰ることにした。
「今日は忙しい一日だったねー」
「そうだね」
そう言いながら私達は帰り道を歩く。
「帰り、夏希の家まで送って行こうか?」
「いや、いいよ。彩乃の家の方が近いし」
「そっか」
その後も帰りながら色々な話をした。最近何食べて美味しかったとかジグゾーパズルにハマってるとかやりたいことの計画練ってるけど内緒だとかそんな話をした。空が赤く色づいていき、私達は家の近くまできていた。
夏希が照れくさそうにしながら言う。
「なんか私達さ、青春してるって感じ、しない?」
それに答えるために口を開こうとしたが、夏希の方が早かった。
「は、私何言ってるんだろう?今のなし。あ、彩乃この辺りだったよね。またね」
「う、うん。またね」
夏希は私に手を振り夕焼けの道を帰っていった。私は小さくなっていくその背中をただ微笑みながら見ていた。
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