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目が覚めた…
「ここは?」
病院だろうか。点滴が見える。瞼が少し濡れているのがわかった。
看護師さんが私の病室を見に来た。その後急いでどこかへ行った。きっと報告のようなものなのだろう。少し時間がたって、病室に人が入ってきた。
「目が覚めたのかい?」
お医者さんのようだ。山本と名札に書いてある。
「君は急に倒れてしまったんだそうだ。覚えているかい?」
「母が…死んだん、ですよね…」
「⁉︎」
山本先生は少し戸惑った。
「そう、だ。」
「それであの後、どうなったんですか?犯人は?」
「君は、二日ほど眠っていたんだ。犯人はまだ、見つかっていないらしい」
「そう、ですか」
「明日に色々検査があると思うが今日はここで安静にしているといいよ。何かあれば私か、そこにいる看護師さんにでも声をかけてほしい」
そう言って、山本先生は病室の外へ出た。
あれから何日か入院している。
何も異常はなかったため、明日で退院だと山本先生に言われた。
入院中にお母さんは一度もお見舞いに来てはくれなかった。
お母さんは死んでいるのだ。当然だ。
これから私は独りだ。もうお母さんとは会えないのだ。
毎日涙が零れる。私は生きる希望を失った。
最後だって喧嘩したままだった。
もう一度お母さんに会いたい。何度もそう思った。しかしお母さんに会えるはずもない。
最後にあの時のことをごめんなさいってちゃんと謝りたかった。
自分の望みと現実との矛盾に胸を締め付けられて動けない。何もやる気が出ない。
そんな私に対して、夏希だけは毎日お見舞いに来てくれていた。
毎日話をしてくれたし、リンゴとかも剥いてくれたし、私は彼女のおかげでなんとか今日までやってこれたような気がする。
今日もお見舞いに来てくれて、今さっき帰ったところだ。
それでもやはり生きていく気力が湧かない。
お母さんの居ない世界に、なんの価値があると言うのだろう。
そんなものは、少なくとも今の私にはなかった。
お母さんは頑張り屋で、とてもいい人だった。私はこんなになるほど、悪い子だったのだろうか。誰のせいでこんなことになっているのか。
簡単に答えが浮かんだ。お母さんを殺した犯人だ。
許せない、お母さんを奪った奴が。許せない。悔しい。でも私には何もできない。
自分の無力さから、また涙が溢れてきた。
私はそのまま、眠りについてしまった。
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