0人が本棚に入れています
本棚に追加
ある王様が治める国が傾き始めた。
それに伴い、大臣達は状況を改善するために政策を打ち出した。
その名も『ありがとうポイント』というポイント給付制度だ。
国民的には生活が苦しいので現金で貰えたほうが嬉しいのだが、お偉い方々の考えは我々には計り知れないと甘んじて受けることにした。
国の政策担当が言うには「最近は人と人との繋がりが希薄であるため、人に感謝の言葉を述べることも減ってきている。国が傾いてるいま、感謝が出来ないということは他人を大事に出来ないということ。大変なときこそ支え合わなければならない。このままでは国として衰退する一方なので、感謝の言葉を伝えたり、伝えられたものにポイントを給付する」というものらしい。
感謝されることをした又はされた場合は、お互いに申請をすればポイントが支払われる仕組みである。ポイントは1ポイントから現金の代わりに使用できる。例えば、落とし物を拾ったら10ポイントというように内容ごとにポイントは変わる。
運用してから数日は国中に感謝の言葉が溢れ、人々がポイントと感謝の言葉を貰えると喜んでいた。
しかし、長くは続かなかった。
感謝の不正受給や、感謝されることをしてやったのに相手が申請してくれないなど、クレームが殺到し始めたからだ。
感謝ではなくありがた迷惑が世の中に溢れてしまったので、大臣達は『ありがとうポイント』の給付を中止した。
反省を活かした王様は1ヶ月後、新しく『ごめんなさいポイント』という制度を発表した。
国の政策担当が言うには「感謝の言葉を貰うために善い行をするのは本末転倒である。本当に人として褒められるべきは失敗したとき、迷惑をかけてしまったときに謝罪できる素直な心だ。そうすれば国として更に発展するだろう。よって謝罪ができたものにポイントを申請する」というものだ。
運用してから数日は、国中に謝罪の言葉が溢れ人々はポイントと謝罪の言葉を受け取った。
しかし、長くは続かなかった。
謝罪をするために、わざと失敗するものや迷惑行為をするものが増えたのだ。
本当に反省もしていないのに言葉だけの謝罪が溢れかえり、悪行が蔓延するのを危惧した大臣達は、『ごめんなさいポイント』の給付を中止した。
1度ならず2度までも政策を中止された大臣達は、王様と話し合いを重ねた。
そして3度目の正直と言わんばかりに、1ヶ月後ある政策を発表した。それが『能動的停止ポイント』だ。
国の政策担当が言うには「他人に迷惑をかけるようなことや、感謝を要求するようなことはもちろんしない。なにが国のためになるのかと考えたら、何もしないで大人しく家にいること。余計なことをしないので、そうすれば問題もなにも起こらない。ただそうすると労働人口が一気に減る。なのでこれから能動的に停止を選んだ場合、10日で1ポイントとする」というものだ。
運用してから数日たつが、ほとんどの国民は政策を無視して自分たちの生活費を稼ぐために働いている。家に籠もっているのは、王様と大臣達だけだ。
お偉い方々は、『能動的停止ポイント』が始まっても大きな問題が起きないので、政策の成功を喜んでいた。政策の成功を祝して、『革命日』という祝日まで設けた。
それを受け、国民は王と政府に対して受動的でいることを辞めた。
最初のコメントを投稿しよう!