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物語のおわり
神奈川県小田原市に於いて、両親と旅行に来ていた当時四歳の女児が夕方、両親が目を離した隙に行方不明になったその十二年後に無事保護された事件で、県警は二十六日、未成年者略取、逮捕・監禁の疑いで、発見時に一緒にいた同県綾瀬市、無職の藤野睦月容疑者(三十歳)を逮捕した。なお、余罪についても取り調べを進めている。
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窓の外を、獰猛な獣の咆哮に似た音と共に、バイクが一台、走り去るのが見えた。
黒色のフルフェイスのヘルメットを被り、真っ黒なレーシングスーツを纏ったその姿を見て私は、外へ出掛けて行く睦月を思い出す。
目の前に置いてあるカップを持ち上げ、唇を寄せると、ひと口飲んだ。
柔らかな湯気が、睫毛に触れる。
立ち昇る香りに胸が、痛む。
先ほどから真っ白な紙を前に、一本のペンを指に挟んだまま、その滑らかな表面をじっと見つめていたのだった。
ようやく、書くべき言葉を見つけた私は、一文字ひともじ、刻み込むように綴る。
『いま私は壊れてしまった世界に、います。
ここは燦きに溢れ美しく、同時に少し、淋しいところです』
それが最初で最後の睦月への手紙だった。
《了》
注) 刑法第二三〇条第一項にいう「監禁」は、暴行または脅迫によつてなされる場合だけではなく、偽計によつて被害者の錯誤を利用してなされる場合をも含むものと解すべきである。つまり、たとえ被害者が自らが監禁されているとの認識を持たなかった場合でも、偽計により生じた錯誤により限られた場所から移動・脱出する事を困難にせしめているのであれば、監禁として成立する。
出典
Wikipedia『逮捕・監禁』
最高裁判所第二小法定昭和33年3月19日
昭和32(あ)2587決定 棄却 刑集 第12巻4号636頁
参考図書
夢野久作著『瓶詰地獄』より一部引用
ハンス・クリスティァン・アンデルセン著『野のはくちょう』より一部引用
一輪の白い薔薇の花言葉
『一目惚れ、貴女しかいない』
『私は貴女に相応しい』
『永遠の忠誠心』
『純潔、純粋』
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