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第4話 そんな日々を
お互いの仕事が終わっても……怜とは違い、一応正社員となった裕司は下っ端としての仕事が山ほどある。
まかない処の派遣を抜いても、裕司に割り振られる仕事は多いのだ。
「……よし」
頼まれていた仕事はなんとか終わったので、先輩や料理長を見てもほぼ終わりかけだった。最終確認をしてから……料理長に聞けば、『終わっていい』と言われたから遠慮なく帰ることにした。
まかない処の前を通ると……こちらは当然終わっているので暗い。しかし、入口に置いてある小さなテーブルと手製のダンボールボックスの差し込みには……大量のピンクの紙が入れてあった。これはホテル内のリクエストボックスである。
(……まあ。毎日出向くわけじゃないし)
それを寂しいなどと思うことはない。厨房の仕事は大変だが、ちょっとした息抜き気分でまかない処にも派遣してもらえるのだから……充実した日々だ。
そして、それは私生活についても。
裕司は着替えてから自宅に向かえば……鍵を開けようとすると、ドアがいきなり開いた。
「おかえり、こもやん!」
「……ただいま」
この春から、きちんと怜と同棲を始めた。怜は先にお風呂を済ませたのか少し髪が湿っていた。
「お疲れのこもやんは何が良い? お風呂? コーヒー??」
「んー、とりあえずコーヒー……」
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