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夢から醒めた世界はとうに蝉時雨
どうも息が苦しくて
無価値な過去を恨んではまた
日が暮れる
一か八かの大勝負 のってみなきゃ損はしないと
お祭り騒ぎの街の中
むせかえるよな甘い匂いと
騙し騙しの的あて屋
暗闇を照らす明かりは
きっと誰かの夢の跡
今日がこんなに辛いのは
あの子が引いた籤のせい
消えゆくものを懐かしむように
両手はまだ金魚網
目をつむるように事切れる
魚が確かに水をかく
やっと吐いた息の泡(あぶく)
魘される夢の隙間
どうして、どうして、
泣きたいくらい愛しても
死にたいくらい生きていても
穴が開いた両手のまま
僕ら大人になってゆく
綿菓子が溶けたあの日に
信じられなかった大人になってゆく
夜道を彩る花火の音を
煩わしいと思ってしまったのなら
あの日君の歌を茶化したのと同じ
嘘吐きで汚い大人になってゆく
ねぇ、それは夢見の悪い君と僕の最後の約束
街を横切る世人がどこへ向かおうと
胸に余る言の葉は
浮世の声に勝るほどの
価値もなく
吉か凶かで贖える(あがなえる)
そんな恋ならそれでよかった
まやかしいとし人騒がせ
置き忘れていく面影たちを
人は記憶というのだろう
彷徨いたくなる道のりは
きっと子供のころの夢
夜がどんなに暗くても
明けてしまえば戻れない
見えないものが見えてしまって
心はまだ鼻たらし
どうして、どうして
泣きたいくらい愛しても
死にたいくらい生きていても
穴が開いた両手のまま
僕ら大人になってゆく
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