11人が本棚に入れています
本棚に追加
/68ページ
神倉はリンゴにフォークを突き刺して、僕に例の人物のことを聞いてきた。
「その木瀬川 翠ってどんな男なの?」
「僕は嫌われてるからよく知らない」
「は?」
これは事実だ。僕はナオの兄の木瀬川 翠に関して対して殆ど情報を持っていない。
「顔を合わせると舌打ちされて睨まれる。話は特にしてないし僕と馬が合わない」
ナオの勉強をみるようになってから挨拶に行ったこともあるが、一方的に追い出された記憶は新しい。
「クソ兄はわたしが緒方さん大好きなのを快く思って居ないのです。だから、緒方さんにつれない態度をとります」
ナオの補足説明はあながち間違っていないかもしれない。なぜならば彼は極度のーー
「光高、行くわよ」
神倉はいきなり僕のエプロンを脱がせにかかった。
「里依をそんなよく知らない男となんかデートさせらんない。最低でもあたしに紹介してからじゃないと付き合うのは許さないわ。そして一発ビンタよ」
何故ビンタが必要なのかは僕にはよくわからない。
「僕今からタルト焼......」
「そんなの後で良いのよ!」
“後で”焼かせるつもりなのだ。神倉は料理をしないせいで所要時間が全くわかっていない。冷やしたり固めたりするには今から焼いた方が手間が少ないのだ。僕がエプロンをおさえていると、ナオが手を挙げる。
「それならばわたしも行くです」
「木瀬川妹は真と一緒にお留守番してなさい」
急に話題にあげられた真はしれっとナオの分のリンゴにまで手を出して食べている。
「え、俺も行きたい」
「4人で歩いたら目立ってしょうがないでしょ!」
最初のコメントを投稿しよう!