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7個差のタルト・タタン[後編]
ーSide 緒方 光高
「はぁ?? 里依がデートぉ?」
305号室に神倉の低めの声が響き渡る。撮影で最近はこの部屋に来ていなかった神倉としては、寝耳に水の展開らしい。驚きという点では僕にとっても殆ど同じだけれども。今日は一番に305号室にやってきた真が珍しく状況を神倉に説明する。
「そ。そこのおチビの兄とだって」
「誰がチビですか」
里依さんに会ったその日に2人で出かけににいくことを申し込んだというのだから相当だ。神倉は身長を傘増しするためにソファの上に裸足で立っているナオを持ち上げる。
「ってか、この子誰よ」
「わたしは木瀬川 直。緒方さんの”恋人”です」
「はぁぁ??」
神倉は僕に非難の目線を向けるが、濡れ衣である。僕は、神倉に床に下ろされた後に精一杯胸を張るナオの前に屈んで諭すことにする。
「ナオ、嘘は良くない」
「そうだよミニマム。嘘や策略は良くない」
真はどこの立場から発言しているのかさっぱりわからないが、今は何も言わないことにしよう。
「それならキセージジツにしましょう!」
「チビっ子、どこでそんな言葉覚えてきたんだよ」
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