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里依さんは優しいからすぐに許してくれると思う。けれど、その優しさに甘えるのは違う気がした。真もナオに伝えたいことがあるらしい。珍しいことに真がわざわざナオのために買ってきたらしいお菓子をナオに渡す。
「直。里依さんは抜けてるし考えなしだけど、基本的には可愛いし気遣いも出来るレディなんだよ。里依さんを超えたいなら自分の置かれてる立場や環境を振り返ってよく考えることだね」
「佐藤 真は冴島 里依が好きなのですか?」
「人並みにはね」
「佐藤?」
僕は聞きなれない苗字に首を傾げる。また息を吐くように嘘をついているらしい。
「いや、今突っ込むとしたらそこじゃないでしょ。ーーま、良いや。暗くならないうちに送っていけば」
真の言う通りである。僕はナオの荷物をまとめて出る準備をする。
「じゃあ、行こうか」
ーーそして、ナオを家に送ったあと僕だけが里依さんに無視をされて一週間になる。今日は土曜日。本来であれば里依さんは真の絵のモデルと料理の練習のために305号室にくる日なのだが、彼女は一向にやってくる気配がない。
そのかわりと言っては変だが、いつものメンバーに加えて完全に僕の家を第二のハウスだと思っているナオがやって来ている。そして、僕は真とナオの会話から里依さんが今日デートだということを知ったのである。
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