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7個差のタルト・タタン[前編]
ーーSide 冴島 里依
そもそもの発端は緒方さんからのメッセージでした。
午前中、仕事の最中に来たメッセージは緒方さんらしく、要件のみが書かれていました。
[相談があるから今日仕事が終わったら305号室に来て欲しい。里依さんの力が必要]
緒方さんから私に助けて欲しいという依頼は滅多にありません。緒方さんに助けられることはあっても私が緒方さんを助けることは圧倒的に少ないのです。
(今日こそ社会人の先輩たる所以を見せつけることができそうですね)
夕方、張り切って305号室のチャイムを鳴らすと、パタパタと小さな足音が聞こえてきてドアがあきます。
「緒方さーー」
すると、この小さな女の子が抱きついてきました。細い手足がぎゅっと私の胴体に回されます。
「緒方さん! 待ってまし……え?」
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