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神倉は実家でいただきものとして沢山貰ったのだというリンゴをゴロゴロとテーブルの上に置いた。真っ赤な艶のある紅玉リンゴは主張が激しい。神倉がメッセージでタルトが食べたいと言っていたので、今日はリンゴを使ったタルトをつくる予定でいる。
「しかし、よく里依も付き合うって言ったわね」
「なんか今日ここに来たくなくなる嫌なことがあったんじゃ?」
「アンタまた何かしたの?」
「今回は”俺じゃない”ね」
真はテーブルの上で一番見た目の良いリンゴを手に取る。いつも里依さんが座っている椅子の上に置くと、リンゴのデッサンを始めた。
「......。」
僕は傷の少ないリンゴを2つほど選んで切り分けることにする。リンゴから出る天然ワックスでツヤツヤとしている表面を少し布で拭くと、さらに光沢が増した。
「緒方さん緒方さん! ナオはウサギの形したのが良いです」
「わかった」
リンゴを8等分して、中央のタネを取ると綺麗な蜜が入っているのがわかる。ナオが切り立てのリンゴを先に食べようとする手を神倉が掴んだ。
「この木瀬川なんとかだっけ? なんでここに居るの」
「なぜって、恋人が週末に会うのは義務ですよ?」
「そういうのはいいわ」
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