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神倉はナオの手を離すと、ナオをテーブルまで連れて行って椅子の上に正座させた。神倉のオーラに気圧されたのか、ナオは正直に話し始める。
「クソ兄が居ないので寂しくて遊びに来ました」
「クソ兄」
「クソ兄はバイトを急に入れて構ってくれなくなったと思ったら、今度は冴島 里依とデート。わたしに構ってくれないのが悔しいです。その点、緒方さんは構ってくれるので、やはり一緒に居るなら冴島 里依でなく緒方さんですね!」
「とんだかまってちゃんじゃない」
神倉は何かを言おうとして“まぁ、いいわ”と言ってやめた。僕は切り終えたリンゴを4枚のお皿に入れてテーブルに置く。ナオは再び手を出そうとしてーー神倉の顔を見てやめた。
「いただきますを言ってから全員で食べるわよ」
ーー
「いただきます」
リンゴは美味しかった。
神倉におっかなびっくりしていたナオも、次第に打ち解けてきたのか話をし始めている。ただ、いつもよりも静かだ。ここに里依さんがいれば盛大に味の感想や、切り方のコツなんかを聞いてくる時間なのに。
(里依さんが居るのが当然になってきてたのかもしれない)
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