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「ねぇ、あれキスして......る?」
動揺した神倉が青い顔で僕の顔を凝視する。僕と神倉はほぼ同じ角度から覗いているので、見える結果は同じだ。
「帰る」
「えっ」
本当にキスしているか、していないかは問題ではない。僕はエスカレーターに向かって足をすすめた。神倉が遅れて追いかけてくる。
「人のデート見るとか悪趣味だし、タルト焼かないといけないし、帰る」
「光高......ごめんって」
神倉は悲壮な声で謝ってくる。でも、僕は何に対して謝られているのかわからない。
「何が? 僕には関係ないし」
振り返って、神倉の顔を見ると、神倉は目を逸らす。
「いや、そのえっと......」
「神倉が帰らなくても僕だけで帰るから。里依さんがイチャイチャするところ、1人で見てきたら」
一度だけ振り返ると、勝ち誇ったような翠の顔が見えた気がした。
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