7個差のタルト・タタン[後編]

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『そんな理由で』  寂しかったんだろうな。と溢します。そしてそこまでわかっているのに、また今日も兄妹喧嘩をしているらしいのでした。 「俺はまだ大人じゃねーから、寂しかったが理由で心配かけさせられて”はい、そうでしたか”って飲み込めねぇの。俺だってできることは努力してるし、1人じゃ限界がある」 『翠さん......』  兄妹2人の家で出来ることは限られています。 「思春期って奴だろ。親とかきょうだいに距離をとりたがるやつ。だから、あんましコミュニケーションもうまくいかねーし、肝心なことは言わねーし」  翠さんは翠さんで苦労をしていたようです。 「ひとりでモヤモヤしてたら、なんか、全然知らない人に助けられて、その、感謝、してる、っていうか」 『あぁ! 緒方さんに助けてもらったんですね!』 「いや、アイツじゃなくてアンタだよ」  翠さんは私の頭にデコピンをします。 「男の俺じゃ下着とか流石に買えねーし。困ってるのも知らなかったんだよ」  それに、と翠さんは続けます。 「ナオはあんな性格だから、人に迷惑かけることが多くてさ。俺いつも謝りにいってたんだ。だから、また怒られると思った。それなのに冴島サンが受け入れてくれたから嬉しかったんだ」 『お役に立てたみたいで、なによりです』  翠さんはやはり当初の印象通りしっかりしたお兄さんでした。でも、なんだか誰かとよく似ている雰囲気を持っているのです。私の警戒ランプがちかちかと先ほどから点灯しはじめています。 「おぅ。じゃ、そういうことで今日も俺の役に立ってな」 『え?』
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