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ーーSide 木瀬川 直
わたし、木瀬川 直はというと、冴島 里依の代わりに絵のモデルとやらをやらされていました。冴島 里依がいつも座るという椅子に座って、冴島 里依がよくやっていたというように佐藤 真の話し相手になっています。
「わたしは休日を緒方さんと過ごしたかっただけなのに、なぜ」
「なぜなぜ期の未就学児じゃないんだから自分の意見が全部通るわけじゃないことを理解したら?」
「キーーーーー!!」
「猿だ」
緒方さんがあんなにも丁寧に接してくれるのに、佐藤 真というやつは非常に失礼なやつです。年下のレディに対して、チビだのガキだの猿だのは流石に度が過ぎて無礼極まりないというものです。……良かったところといえば、先日私にプレゼントしてくれたダックワーズが美味しかったくらいです。
「ほら、動かないで。里依さんなら微動だにせずに出来るんだから」
「あの冴島 里依が出来るのならわたしにもできます! 朝飯前です!」
椅子に座っているとはいえ、微動だにしないのは流石に無理があるようにも思いますが、できるといったらできるのでしょう。緒方さんがあの長身女性に連れ出されてしまったのは大層な誤算でした。わたしにとってこの305号室で用事があるのは緒方さんだけなのですから。
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