7個差のタルト・タタン[前編]

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 直ちゃんは真さんのことも知らない様子です。真さんは特に気にした風な様子もなく、先程まで直ちゃんが解いていたであろうプリントを漁っています。 「数学でxが出てきた頃って懐かしー。中学1年生って環境変わって大変じゃない? ほら、部活もあるし勉強も難しくなるしさ」 「そうですね。確かに古くからのお友達が別のクラスに行ってしまって学校では話し相手も居ません」 「それでアイツに勉強見てもらってるクチかぁ」  真さんは赤の入ったプリントをヒラヒラと揺らします。線の細い綺麗な字は間違いなく緒方さんのものでした。プリントに公式なんかが書いてあります。 「ところで、その緒方くんの下の名前って知ってる?」 「緒方さんは、緒方さんです!」 「知らないんだ。ーーふん、光高から俺の話聞いてない時点で、恋人なわけないじゃん。俺、アイツの親友だよ?」 (どの口で言ってるんですかね、この人)  緒方さんに複雑な感情を抱いている癖に1番の親友であるというポジションには固執する真さんは、私には到底理解できない存在です。ついでに自己紹介で苗字に嘘をついて”佐藤 真”なんて名乗ったりなんかもしています。緒方さんが居ないのをいいことにやりたい放題です。
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