7個差のタルト・タタン[前編]

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 直ちゃんは”勝手に見ないでください”と真さんからプリントを奪おうとしますが、真さんの方が少し身長が高いので届かないようです。 「我が木瀬川家にはお金がないので家庭教師に来ていただいてもお支払いすることが出来ません。だから緒方さんには無償でやっていただいています。私的な時間を割いて勉学を教えてくださるーーそれはもう恋人と言っても過言ではありません」 (それは流石に過言では!?)  この独特な思考回路は今までの私が接したことのないタイプの子です。しかし、私はこの中で唯一の社会人。社会の先輩としてあくまで大人な対応が求められているはずです。 「直ちゃん、おうちの方は?」 「家出して来ているので関係ありません。緒方さんに今朝”数日間泊めてください。泊めてくれなかったら家出して”えすえぬえす”で知らない男の人の家を泊まり歩こうと思います”と送ったらひとまずお家に置いてくれました。部屋に入れてくださるってことはもう、それは実質恋人であり家族ですよね」  そう言って頬を赤らめる直ちゃんは本当に緒方さんに恋をしているかのようでした。やはり中学生の女の子から見て大学生の男の人というのは憧れを抱く存在なのでしょう。私がホッコリとしていると、真さんがチラリと私の方を見ます。
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