7個差のタルト・タタン[前編]

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ーー 「どうしてわたしが恋仇の家に泊まることになっているのです」  私の住んでいる304号室に直ちゃんを泊めることになったのは、刑法224条未成年者略取誘拐という疑惑を緒方さんや真さんにかけてはならないという配慮からです。 (一応警察に連絡しましたし、これで法的にはセーフ......ですよね?)  真さん曰く、宿泊先が異性でわいせつ目的や結婚目的などだと思われると厄介ということです。その割に真さんが直ちゃんで遊んだせいで直ちゃんの私に対する信頼度はほぼゼロ。納得がいかない直ちゃんは机の上で私の文房具の雑貨タワーをつくっています。 「えっと。保護者の方に一応連絡したいので、連絡先教えてもらっても良いですか?」 「親はいませんし、クソ兄は携帯端末を持っていないので連絡は出来ません」 「お兄さんが居るんですねー」  家庭構成は兄のみ。保護者に連絡がつかない中学1年生の女の子というのはなかなかどうして危ない香りしかしないのは何故でしょう。 「は、はめましたね。冴島 里依、卑怯ですよ」 (あなたが勝手に言ったんですが)  直ちゃんは今朝方家を飛び出してきたらしく、鞄の中にはろくな生活用品がないようでした。身だしなみもあまり整っては居ません。 (髪がぼろぼろです) 「今日は私と一緒にお風呂に入りましょう!」
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