不幸の連鎖

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 不幸の連鎖

叶翔は誰かを守れるような人間だと、自分を過大評価しすぎていたのだと思い知らされた。 それはまるで娘かのように接してきた理亜からの一言だった。 『ごめんね、叶翔…。  お兄ちゃん自殺しちゃった』 『は…?』 叶翔は空いた口が塞がらず、ただ間抜けな声をあげるしかなかった。 お兄ちゃん、つまり理亜の兄である拓哉とも叶翔は交流があり、ついさっきまで普通に話していたのに、死んだ…? 頭が追いつかなかった。前々から死にたいと言っているのは聞いていた、それでも死ぬときは一緒だよとそう約束したのに。裏切られたと言うよりも、置いて行かれたという気持ちの方が大きかった。 実はこれが初めてではなかった。叶翔は前にも何度か親しいネッ友を自殺でなくしたことがあった。そのネッ友達も色々な事情を抱え、生きることを辞めてしまった。何度思ったことだろうか、大切な人を作るのは辞めようと。 叶翔は自分が大切にしようとするから失ってしまうのだと自分を責め、何度も大切な人を作ることを恐れた。 それでも大切にしたいと、今度こそは守り抜きたいと思う人に会ってしまうのだ。 『何も出来てねぇじゃん…』 乾いた笑みと共に涙が溢れる。 ごめん、ごめんな。 何も出来なくて、守るって約束したのにごめんな…。 静かな部屋に叶翔の嗚咽だけが響く。無力な子供である自分を、助けに行くことが出来ない無力さを改めて感じ、何も感じなくなった。 生きる希望となっていた夢を達成することはもう出来ない、今まで耐えてきた暴力も暴言を耐える方法はもうない。 この世界に生きる価値はないと叶翔が思ったきっかけとなった出来事だった。
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