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それからはなにをしても、憂鬱な感情が叶翔を襲った。
あいつが居ない、そしてあいつが命に代えても守りたがっていた妹でさえも俺は守ることが出来ない。自分の生きてる意味とは何なのかと、叶翔は殴られながら考えた。
こうしてストレス発散のために?
それとも、大切な人を不幸にするためか、そんなことは分からなかった。自分の生きている価値はあいつ-つまり、拓哉より無かったはず。拓哉が生きてる方が良かったはずなのに、あんなに生きたがっていたのに何故俺が生きているのだろうかと考え続け、軽い頭痛を覚える。
その間も止まることのない、降りかかる拳と言葉の嵐。
『お前なんか、産まなきゃ良かったよ』
生んで欲しいとは腹の中にいる時思ってたよ、夢みたいなことを思い描いていたから。
『あんたのその顔、無性にムカつく』
あぁ、自分でもこの顔は嫌いだよ。顔だけで、大切な人を守れないなんて散々だ。顔なんかより誰かを守れる優しい人になりたかった。
声には出さないが、心の中で反論する。声に出してしまったら余計酷くなることをその身で分かっているから。そして地獄のような時間が終わると溜息を零す。
そして涙をこぼし、考えてしまう。
自分の生きる意味とは何なのかと。
そんな叶翔の耳に入ってきたのは歌だった。
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