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「身体に気をつけてね。ちゃんとご飯食べて」 「お兄ちゃん、和香、夏休みに遊びに行ってもいい?」 「健、しっかり勉強して来い」 健は、18年間暮らしたこの田舎町から出て、初めて都会で1人暮らしをすることになった。 「うん、わかった。頑張るよ。和香、遊びに来ていいよ。また連絡するな」 春から中学生になる妹の頭をぽんぽんと撫で「じゃあ、行ってくる」と改札口を入った。 母親が涙ぐんでいるのを見て、こっちまでもらい泣きしそうだ。 バイバイ、と大きく手を振った。 家族や友人達と別れる寂しさと、同じくらいワクワクした気持ちもある。 物価が高いとか地下鉄がめちゃくちゃ深くまであるとか。 不安もあるけれど、とにかく電車に乗ってしまえば、あとは進むだけだ。 母親に持たされたおにぎりを食べながら、健は窓の外を見た。 田んぼの多い風景から家々やマンションが立ち並ぶ風景に変わる。 電車を乗り換えて、特急の指定席に座った。 少し眠って目覚めると、もうそこはビルや大きな看板だらけの都会だった。 (おお…何回見てもやっぱりすげー) 受験以外でも、何度か遊びに来たことはあった。 けれど、住人となる今は心持ちが違う。 住む場所を決め、とりあえずの荷物は送ったけれど、生活に必要な細々した物も買い足さないとならないだろう。 ドキドキしながら、健は、膝に置いたリュックをキツく握りしめた。
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