120人が本棚に入れています
本棚に追加
「俺、荷物少ないし居間で寝るし。そっちの部屋使いなよ」
「あ、ありがとうございます」
見た目のデカさと同じ心の広い人のようだ。
健は、安心して少し笑った。
「あー、やっと笑ったねえ!なんかさっきから表情が硬いし、俺、怖がられてんなーって思ってたんだ」
大男は、胡座をかいて座った。
「俺、向山大和(ムカイヤマヤマト)。大和って呼んでくれていーよー。ちなみに歳は24」
「あ、中津川健(ナカツガワタケル)です。18歳です」
健は、正座をして大和の前に座り、よろしくお願いしますと頭を下げた。
「18!若い!しかし健くんめっちゃ美少年だな」
大和は、無遠慮に健の顔を見る。
「や。そんなことないっす…」
健は、マジマジと見られて照れてしまった。
正直、田舎町の学校では1番モテていた。
茶色懸かった大きな瞳と小さな顔は、母親譲り。
けれど、都会に来たらこんなルックス、ゴマンと居るだろうと思っていた。
大和の方は、デカいのになんだか可愛い顔をしている。
実家の隣で飼われていた大型犬を思い出した。
いつものんびり散歩していて人懐っこい可愛い犬だった。
「大和さんは、デカいっすね」
健は素直な感想を言った。
「あー、だろ?190あるよ」
「ええっ!?そんなに?」
これまでの人生で190cmの人間にあったのは初めてだ。
しかも幅もある。
広く逞しい胸板に、無条件に少しときめいてしまった。
「何かスポーツされてるんですか?」
「あー、スポーツってかバイト?引越し屋の」
就職浪人してっから、まだ暫くつづけるんだ、と大和は言った。
なるほど、と健は答える。俺もバイト探さなくちゃ、と思い出した。
「俺もバイトしたいんですよね」
半分独り言のように言うと「あー、いいとこあるよ!」と大和は破顔した。
「俺の知り合いがやってるカフェ。健くんにピッタリだと思う」
大和は、スマートフォンを取り出して、どこかに連絡し始める。
なんだかすっかり大和のペースだけれど、面倒見の良さそうな人で、健は少しづつ心を開いてきた。
まさか、そんなバイトを紹介されるとは…。その時は夢にも思わなかった…
最初のコメントを投稿しよう!