120人が本棚に入れています
本棚に追加
奥の扉を開けると眼鏡をかけ、黒髪をセンター分けしたお洒落な男性が「お、来たか」とこちらを見た。
「榊原さん。元気?」
大和が手を上げる。
「どれどれ?おー、でかした!大和!どこで見つけた?こんな上玉!」
榊原拓人(サカキバラタクト)というその男は、無遠慮に健の肩を持ち、ガシガシ揺する。
「え?いや!俺、女装とか無理なんで、断ろうと…」
「時給2000円でどう?」
「えっ?に、にせんえんっ?」
実家の田舎町では、時給はまだ850円くらいだった。
2000円なんて有り得ない。怪しすぎる。
「いや、いいです!身体売ったりとかそういうの無理なんで!」
健が焦って言うと、二人はゲラゲラと笑い出す。
「あはは!もう、激面白いんだけど、この子。めっちゃ気に入ったわ」
榊原は、健の頭を撫でながら言った。
「そんなことさせる訳ないだろ?ただ女装して普通にカフェの店員するだけ」
「でも、それで2千円なんておかしいです!うちの地元だったら、時給良くても900円です」
「あー、そっか。だから余計に怪しく思うんだ」
大和は、大丈夫だよ、と言ってニコリと笑った。
「ほんとに危険な時は、絶対に守ってあげるから」と榊原も言って、少しずつ心が動いてきた。
最初のコメントを投稿しよう!