第2章「聖女の血」

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「でも、それだけじゃないんでしょう?特別の日付に特別の名前で学園祭を行うに至った経緯があるんでしょうし、何やら秘密の儀式をやると小耳に挟んだのですが……」  私は温かなティーカップに注がれた柔らかい深緑色の液体を啜った。彼が故国から幾ばくか持ち込んだ茶葉らしい……道理で懐かしい感じがするわけだ。  その味にほだされるように、一つ一つ丁寧に答えてやることにした。 「昨日一緒に読んだ「攫われた娘」でも、娘が攫われたのは七月七日だったでしょう?」 「あ!」  ウジャクが合点がいったというように手を叩く。  そう。七月七日は鵠王国の建国記念日。あの伝承の中で村人達が娘を残して出かけようとしたのが、首都・北辰の建国記念祭なのだ。 「鵠王国の国民はこの日を大々的に祝うのだけど、中でも最大の祭典が行われるのが王城のある北辰(ほくしん)とここ、天河学園なの。要は天河学園における建国記念祭が星祭ということ」
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