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見上げた先にいたナオフミさんは
少し照れくさそうにそう言ってくれた。
『ウエディングベー・・ル?』
「ああ。」
突然のウエディングベールの出現に
何がどうなってこうなったのかわからず首を傾げた。
そんな私の頭に被さったまま少しズレてしまったウエディングベールをナオフミさんはそっと直してくれて微笑んでくれた。
「クリスマスプレゼント。コレは俺からの。」
『クリスマス・・・プレゼント?』
「ああ、いつも頑張ってくれているからな。それに・・・」
『・・・それに・・・?』
頬に流れた涙の跡にひっかかった髪をナオフミさんが長い指で掬い上げ、左耳にそっとかけてくれた。
「生死を彷徨った伶菜と陽菜が退院してきてからも、何かとバタバタしていて、いろいろ深く考えたりする機会がなかったんだが・・ふたりがウチに帰ってきてくれてから初めてのクリスマスなんだなって思ったのがきっかけで、以前のことを振り返ったりしてさ・・色々なことを想い出してな。」
相変わらず多忙な中、私達家族のことをちゃんと考えてくれていたんだ・・
それだけでもなんか嬉しい
でも、どんなことを想い出したのかも
知りたいかも・・・・
『例えば・・・どんなこと?』
「コレ。」
『コレって・・ウエディングベール?』
「・・・そう。浜松にあるホテルのチャペルでふたりだけで結婚式みたいなことをした時は、ドレスだけでベールがなかっただろ?」
そうだった
懐かしいなぁ
あの頃はまだ、ナオフミさんのことを
自分の兄だと信じて一緒に暮らしていた
そんな中、現れた元カレと一緒に生きていこうとした時に
ナオフミさんはそれに立ち憚って私を連れ出し、行き着いたチャペルでプロポーズしてくれたんだっけ・・・
『ドレスは、確か・・・入江さんと彼の同僚の高島さんが準備してくれたんだよね?」
「ああ、俺が気が利かなかった分、入江さん達が気を利かせてくれて。その時に、高島さんに言われていたことを想い出してな。」
入江さんはナオフミさんの親友
学生時代のバイト先で知り合った人
高島さんは入江さんの奥さんで、彼の元教え子で、入江さんと同じ数学高校教師
私達がチャペルへ辿り着く前に、入江さんと一緒にドレスを準備してくれて私にそれを与えてくれた人
かなり前の話だけど、あの時
ナオフミさんは高島さんに
何を言われたんだろう・・・・?
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