187人が本棚に入れています
本棚に追加
そんな中、
「あっ、日詠先生。急いで下さいね。名残惜しいかもしれないですけど。」
『・・・ああ、今、行く。』
特別個室の出入り口にいたナオフミさんの向こう側から聴こえて来た声。
その直後、彼と入れ替わるように看護師さんが入って来た。
「伶菜さん、お久しぶりです~」
『・・・あっ、谷本さん!!!!』
産科病棟の看護師の谷本さん。
臨床心理士としてこの病院に赴任したばかりの頃は、テンポよく話をする彼女が少々苦手だと思ってしまったが、仕事で関わるようになってからは、いろいろと声をかけてくれたりして仲良くなった。
産休前には、一緒にランチをするぐらい仲良くなったっけ。
「このベール、かわいい♪女神様みたい・・・」
『ありがとうございます・・・なんかこんなところでこんな格好してるのが、今でも不思議で・・・・・』
「日詠先生、ベールをプレゼントするとか・・・やるなァ~。結婚して子供が生まれたりすると、夫婦間の仲が冷めやすいってよく耳にするんですけど・・・・日詠先生はもっとベタベタだからな~。」
『そんなこと・・・・』
思ったことはズバッと口にする裏表がない谷本さんにそう言われると、社交辞令とかに感じられなくて、なんだか恥ずかしいけれど正直嬉しい。
「でも、もっとベタベタ、あまあまな日詠先生が見られるのかと思うと・・・」
『えっ?あまあま?』
「あっ・・・っと、まあ、とりあえず、あたしに任せて!」
一瞬、口を押さえた直後、ニッコリと笑った谷本さんは
特別個室に設置されているクローゼットを開けて何かを取り出した。
それって・・・・
最初のコメントを投稿しよう!