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ナオフミさんって
自分からアピールを進んでやるタイプなんかじゃないと思っていたのに
なんか今日は別人みたい
“伶菜は俺のもの”ってアピール嬉しいけれど
相変わらずモテる彼のせいで、私はやっぱり生きた心地がしないよ
『もう・・私、病院、来れないよ~。』
「ソレ、俺の台詞だろ?」
『えっ、そんなこと。』
「さっき、聴こえてきただろ?森村以外のスタッフからの“俺の伶菜を持っていかれた”っていう野次を。」
チン♪
「ほら、8階。行くぞ。」
完全にナオフミさんペースのまま手を引かれエレベーターから降りた。
そして、手を繋いでくれているナオフミさんはさっきまでいた部屋の前に立ち寄ることなくさっさと通り過ぎた。
『あれ?帰るんじゃ・・』
「帰るけど、見せてやらないとな。」
『えっ?』
「俺が憧れ続けているふたりに、伶菜の晴れ姿を。」
そう言いながら、ナオフミさんは病棟の一番奥にある非常階段のやたらと重そうな扉を開けた。
「階段だけど、ドレスのままで上がれる?」
『なんとか大丈夫。』
ようやく放してくれた手でドレスの裾を軽く持ち上げ、ゆっくりと階段を昇った。
確か8階の特別個室病棟の上は屋上だったはず。
『ここに繋がっているんだ~。』
この非常階段が屋上のどこに繋がっているのか確認したのは初めてだった。
『青空キレイだけど、寒っ!!!!!』
ロングタイプの手袋をはめているもののノースリーブスタイルのウエディングドレス姿では肩周りの冷えを誤魔化すことなんて出来なくて。
自分の両腕を抱え込んで肩を震わせた瞬間、
『ナオフミさん・・・・』
背後からすっぽりと体を包まれ、私のダイスキな彼特有のグレープフルーツミントの香りの中、頭上から囁かれた。
「俺が一番アピールしたい相手は、この人達。」
『えっ?』
彼の腕の中で首を小さく左右に振り、辺りを見回す私の目の前で
彼は真っ青な空のほうに向けて左手の人差し指を突き立てた。
『お父さんと・・お母さん?』
「そう。パートナーである伶菜と一緒に、この病院であなた達の背中を追いかけていますって。」
『・・・・・・・・』
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